黒画像で描画をサボるお馬鹿なFirefox

ずっと前から気になっているFirefoxのバグがあるのですが、検索してもそれについてのレポートがどこにも見つからないので、自分でレポートすることにしました。

対象としているのは、Mac版Firefox10.0.1(環境はMacOSX10.5.8)ですが、もう何ヶ月も前の古いバージョンからこの症状は続いています。

前のエントリーに置いてある2つの画像は、どちらも真っ黒なJPEG画像ですが、黒画像2の方は実は隅っこに数ピクセルだけ真っ黒でない部分があり、黒画像1は全面真っ黒です。Firefoxでこれを見ている方は、この黒画像1の方の表示がおかしくなってないでしょうか。(もしかしたらMac版のFirefoxだけかもしれません。)そして、「この症状他でも見た記憶がある」と思う方もいるのではないでしょうか。

違うブラウザで見ている方にはわからないでしょうから、何が起こっているかを説明すると、黒画像1の置いてある場所に対して、どうもFirefoxは、「真っ黒の画像を表示する」のではなく「描画をサボる」という動作をしているようなのです。

これでも何を言っているかわかりませんね(苦笑)。描画をサボるというのは、「背景をそのまま表示する」のとも、「何も表示しない」のとも違います。たとえば、別のサイトからのリンクでこのページを表示したとすると、黒画像が表示されるべきエリアには、「背景をそのまま表示する」場合はブラウザは背景を描画しますし、「何も表示しない」場合はブラウザはその場所をデフォルトの背景色である白に塗りつぶします。しかし、今回の「描画をサボる」場合は、リンクで飛んでくる前にその場所に表示されていたものがそのまま残って表示されてしまいます。次の画像は、前のエントリーから一旦Yahooのサイトに飛んで、戻るボタンで戻ってきた時の画面ですが、黒画像が表示されるべき所にYahooページの一部が残ってしまっています。
Ffbug1

描画をサボるのは、他のサイトから飛んできた時だけではありません。ページをスクロールすると、黒画像の表示されるべき位置(つまり描画をサボる位置)も移動していきますが、そのエリアに直前に表示されていたものが残るため、例えば次のようなことになってしまいます。
Ffbug2

Firefoxが描画をサボるのは、「画像の黒い部分」ではなく、「全面が真っ黒な画像」です。1ピクセルでも真っ黒でない部分があれば症状は出ませんが、全面が真っ黒であれば、JPEGでもGIFでもPNGでも同じ症状が起きます。つまり、その画像が「全面真っ黒である」ということをわざわざ判定した上で積極的にバグを発生させているのです。全く意味不明ですが、開発者が何かの仕様を勘違いしているとしか思えません。この描画をサボる症状は背景画像でも起こるため、ブログなどで背景をあえて真っ黒にするために真っ黒な画像を使用しているページなどでは悲惨なことが起きます。今日現在のインテル長友選手のオフィシャルブログのサイドバーはまさにそういう状態です(涙)。Firefoxで表示してスクロールさせて愕然としてみて下さい。他にも様々なサイトでこの黒画像バグは猛威をふるっています。

これだけあからさまな症状が出ているのに、バグが対策されないのは、まさか真っ黒な画像ピンポイントのバグとはだれも思わないため、症状に出会った人もスクリプトの書き方等で何かブラウザ間で互換性がない部分があるとか、そういう方面の問題だと誤解されて的確なレポートが上がらないのかもしれません…って、いくらなんでも開発者側がまだ気づいてないとは思えませんが…。

可及的速やかにバグ対策してください>Mozilla様。

追記:こちらでこのバグを確認したのはMac版のFirefoxだけなので、Windows版でも起こるものなのか否か、どなたか確認できた方は教えて頂けると幸いです。

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Firefoxバグテスト

Black
黒画像1

Black2
黒画像2

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2011

今年を簡単に総括なんかできません。

日本の歴史においても、自分史においても、今年がどういう年だったかはもっと長いスパンで評価しないといけない気がします。

個人的には、震災がなくても、人生の大きな転換をせまられ、厳しい条件の中もがき続けたまま今年が終わろうとしています。その中でもようやく決断をして一歩踏み出せたこと、これから一歩踏み出そうとしていること、まだ腹をくくれず踏み出せずにいること、棚に上げたままの大きな荷物、等々、いずれにせよ全てはこれから。

日々の愚痴(笑)は主にツイッターに垂れ流しているので、ブログなどはほとんどご無沙汰になっていますが、来年はいくつかの目に見えるポジティブな「一歩」を踏み出して、こちらでも報告できることが多くなればいいなと思います。

歯を食いしばって真面目に生きてる人たちに、幸多からん2012年となることを祈って。

#今年は、「サッカーファンとしての自分」だけは、とてもポジティブな一年でした。自分以外の何かを応援する自分というものを持っておくことは、時に自分自身を助けるということも実感した2011年でした。

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幾何大王からの挑戦状#17

今まで、毎月締切直前に「今月の問題」をここで紹介して呼び込みを行っていましたが、投稿のリピーターの方も増えてきて、過去問ページもできたので、ここでの呼び込みの役割は終わったかなと思い、今回で一旦終了します。またニーズがあるようであれば、読者の方との接点を何らかの形で(facebookページとか?)設けるかもしれません。

もちろん、雑誌「理系への数学」での連載自体は続くので、これからも「幾何大王からの挑戦状」をよろしくお願いします。

今日締切の9月号の問題はこれでした。

Angle17_q 「△ABCの内部に点Dがあり, ∠ABD=17°, ∠BCD=13°, ∠BDA=∠CDB=137° のとき, ∠CADを求め,その角度となることを初等幾何で証明してください。」


17回目なので、17°を使ったシンプルな問題です。

なお、#16の解答(9月号で紹介したもの+読者解答より別解5件)と、もう1つの連載「数学パズルにトドメをさす!?」の10月号のFlashコンテンツは、明日(9/12)それぞれのページで公開する予定です。

幾何大王からの挑戦状 過去問&解答集
数学パズルにトドメをさす?! 今月のFlash

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幾何大王からの挑戦状#16

今回の問題では、いつもは隠れている正三角形が最初から出現している…ように見えますが…

Angle16_q 「正三角形ABCの内部に点Dがあり,∠DBC=12°,∠DCA=18°のとき,∠DABを求め,その角度となることを初等幾何で証明してください。」


実は見た目よりずっと難しいです。某書籍の用語で言うと、自由度0の整角三角形なので、本の中の方法で証明を探すにも何段階かステップを踏まなくてはなりませんが、もう1つどこかに正三角形を構築できればもしかしたら本を使わなくても道筋が発見できるかも。
解答の送付先は、理系への数学8月号でご確認下さい。締切は8/11(木)です。

なお、「幾何大王からの挑戦状」の過去問集のページが、先月から公開されています(→こちら)。現在#14までの問題と解答が掲載されており、もうすぐ#15も公開されるのでお楽しみに。

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幾何大王からの挑戦状#15

今回は、前回と打って変わって難問です。二等辺三角形の見た目にダマされずに、下の四角形の部分だけで考えましょう。煩わしい角度を使わないために、30°/7を1とする単位に読み替えて試行錯誤するのはよいと思いますが、Aを中心とする正42角形とかを作っても多分何の役にも立たないでしょう。

Angle15_q 「∠CAB=60°/7の△ABCにおいて,AB上に点D,AC上に点Eがあり, ∠ABE=30°, ∠BED=240°/7, ∠EDC=480°/7のとき, AB=ACであることを初等幾何で証明してください。」


いろんなアプローチがあると思いますが、入り口の一つとして久々に大ヒントを。30°を円周角とみなすと、中心角は60°になるので、正三角形が出来ますね。
解答締切は7/11(月)、送付先は「理系への数学」7月号でご確認を。

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全てのデザインには意味がある

 たまたまTVをつけたら、NHK教育の「デザインあ」という番組をやっていた。その中で流れていた「じょうろ」のデザインについてのショートアニメーションが非常に示唆に富んでいた。

 じょうろの注ぎ口から水がちょろちょろとしか出ないのを見て、もっとドバッと出た方が効率がいいと考えて、注ぎ口自体をなくしてしまう。すると、水は勢いよく出るようになったが、その勢いで花を痛めてしまう。そこで、花を傷めないためには水を少しずつ注げればいいと考えて、注ぎ口をつけると、水の勢いの問題は解決した。でも、注ぎ口を取りつけた位置より下の水が残ってしまい、それを出すにはじょうろ全体を90度傾けなければならずこれは不便だ。そこで今度は、注ぎ口の根本を本体の低い位置に設置してみると、水が残る不便さも解消された。よし、これからはこのデザインにしようと言って、今あるじょうろを見てみると、実は最初からそのようなデザインになっていた、というお話。

 じょうろややかんに注ぎ口がついているのはみんな知っているが、それが本体の一番下の部分に接続されていることなんか普段だれも意識していない。デザインのポイントとして意識されることもなく、当たり前すぎてわざわざ仕様書に書くまでもないが、「理由があってそうなっている」ことが、身の回りのあらゆる物の中に山ほど存在する。困るのは、なにか新しい機能を追加したり、見た目のデザインを刷新しようとしたりする際に、既存のデザインの意味のあるポイントを意識化できない人が設計に携わってしまうと、「カッコイイけど水が注ぎにくい欠陥じょうろ」のような物を世に出してしまうことがあるということ。購買意欲を喚起するような新機能をやたら盛り込んだ挙げ句、先人の知恵により改善を重ねてきた本来の機能における使い勝手の良さが全て失われているようなダメデザインも今の世の中にはあふれている。

 これは、物のデザインの話だけではなく、組織のデザインやシステムのデザインでも同じ事。何か決められたルールや手順があるけど、それに何の意味があるのかよく分からず、規則に従いルールを守らせようとする側の人に訊いてもその意味を説明できないようなことがある。それを、無意味なルールとして簡単に排除してしまうのはとても危険だ。実は、普段はほとんど意識化されないなんらかの理由があって存在している手順であって、それが失われるとどこかに著しい不便が生じるのかもしれない。
 たとえば、レジの前に不要レシートを捨てる箱が設置してあって(これはいい)、最初から客にレシートを渡そうとせずに客の目の前でレシートをその箱に捨ててしまうバカ店員(これはダメ)がいるようなコンビニでは、そもそも何のためにレシートを渡すというシステムが存在するのかを店側もきちんと理解した上で、店員にもその意味を理解させないといけない。小学校では、自転車が車道では左側を走らないと危険である理由をきちんと教えないといけない。どんなデザインにもルールにも、多くの場合何か理由があり、それが形骸化していると勝手に判断して無視する人の行為こそが、結果的にそれを形骸化させていることが多いのだ。

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幾何大王からの挑戦状#14

読者解答は本日締切です。今回は少し簡単過ぎたかもしれません...。

Angle14_q 「AB=ACの二等辺三角形ABCにおいて,AB上に点D,AC上に点Eがあり,BC=DC,AD=CE,∠CDB=∠CDEのとき,∠CABを求め,その角度となることを初等幾何で証明してください。」


解答締切は本日6/10(金)、送付先は「理系への数学」6月号でご確認下さい。
なお、明日発売の7月号では、「数学パズルにトドメをさす?!」は休載させていただきますが、コラム「幾何大王からの挑戦状」は通常通り掲載していますので、#15もお楽しみに。

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「オリビアを聴きながら」

 1年半ほど前に、「コード進行の素晴らしい名曲」を順次コード起こししていこうという企画を始めて、1回だけで中断(苦笑)していたのですが、ようやく第2回です。(前回は→これでした。)
 今回取り上げるのは「オリビアを聴きながら」。言わずと知れた、尾崎亜美が杏里のデビュー曲として書いた日本ポップス史に残る名曲。コード進行を見ても、名曲の名曲たるゆえんがわかります。下のコード進行は、杏里のバージョンではなく、亜美さんが弾き語りで演奏する際のものから採っています。Gキーの曲ですが、コード進行の構造をわかりやすくするために、Cキーに移調したものも並記しておきます。

(オリジナルキー)
[G][D/G][Dm7 E7][Am7]
[Cm7 Eb/F][Bbmaj7][A7][D7 C/D D]
[G][D/G][Dm7 E7][Am7]
[Cm7 Eb/F][Bbmaj7][A7][D7 C/D D]

[Cmaj7 D/C][Bm7 Em7][Am7 D7][Gmaj7 Dm/G G]
[Cmaj7 D/C][B7 Em Em/D][A7/C# A7][Am7/D D7 B7/D#]
[Em Eb+5][G/D C#m7-5][Am7 Am7/D]

間奏[G][D/G][Cmaj7 Bm7 Am7][C/D]〜

(Cキー版)
[C][G/C][Gm7 A7][Dm7]
[Fm7 Ab/Bb][Ebmaj7][D7][G7 F/G G]
[C][G/C][Gm7 A7][Dm7]
[Fm7 Ab/Bb][Ebmaj7][D7][G7 F/G G]

[Fmaj7 G/F][Em7 Am7][Dm7 G7][Cmaj7 Gm/C C]
[Fmaj7 G/F][E7 Am Am/G][D7/F# D7][Dm7/G G7 E7/G#]
[Am Ab+5][C/G F#m7-5][Dm7 Dm7/G]

間奏[C][G/C][Fmaj7 Em7 Dm7][F/G]〜

 この曲のすごい所は、王道で定番のパターンがギュッと詰め込まれているのに、それらが効果的に使われているので、ゴチャゴチャした印象にはならずに実に自然な流れの中で明確な起承転結を形作っているというところです。以下、定番のポイントをCキー版を元にピックアップしてみます。

【定番ポイント1】4度上への部分転調
 基本的に、ドミナント7thを強引に前置すれば、どんなコードに進行させることも可能で、その際に起こる一時的な転調を部分転調と呼びますが、これが奇をてらった感じではない自然な流れとなる定番のパターンがいくつかあります。その1つが、サブドミナントを一時的にトニックとみなした4度上への部分転調です。
 Cキーで言うと、トニックのCからサブドミナントのFに進行する際に、Fに解決するII→V進行(Gm7→C7)を前置して、C→Gm7→C7→Fとすることで、一時的にFメジャーキーに転調したような印象になる、というものです。解決先をFではなくDm7にすると、C→Em7-5→A7→Dm7としてDマイナーキーへの部分転調となりますが、ポップスの世界では平行調(同じ調号の付く短調と長調)は結構ボーダーレスに行き来するので、CメジャーキーからDマイナーキーへの転調もフラットが1つ増えるという意味でこれもFメジャーキーへの転調と同様4度上への転調とみなしてよいかと思います。
 今回の曲では、Dm7への進行でEm7-5の代わりにGm7を用いたC→Gm7→A7→Dm7というパターンが1〜4小節に出現します。(後述しますが、1〜2小節のコードはまとめてCとみなします。) メロディーも、元のダイアトニックスケールには含まれず、一時的な調性のダイアトニックスケールには含まれるBb音が転調のきっかけとして使われていますね。

【定番ポイント2】2度下への部分転調
 前項で、平行調同士はボーダーレスに行き来できると書きましたが、実は同位調(同じ音を主音とする短調と長調)も(これはポップスに限らず)結構強引に行き来できます。そして、同じような感覚で、一時的に終止したメジャーコードから、同じルートを持つマイナーコードへの進行(もしくはその逆)も、メロディーラインも含めて比較的スムーズに行えます。これを利用すると、たとえば一時終止感のあるCメジャーコードから、Cm7に強引に進行し、これをIIm7とみなしてII→V→I進行を行うことで、C→Cm7→F7→Bbという進行が可能となり、2度下への部分転調が実現します。
 今回の曲では、1〜4小節でDm7に一時的に終止した後、平行調のトニックであるFに進むかわりに同じルートのマイナーコードのFm7を持ち出し、それをIIm7と見なしたII→V→I進行で6小節目のEbmaj7に進むことで、Fメジャーキー(Dマイナーキー)からEbメジャーキーにさらに部分転調しています。(実際には、II→V→I進行のV7=Bb7の代わりにAb/Bbを用いています。) メロディーでもAb音・Eb音が使われていて転調感が明確になっています。

【定番ポイント3】短3度下への復調
 メジャーキーから見ると、平行調の同位調は短3度下、同位調の平行調は短3度上なので、短3度の転調は一般にスムーズに行われます。この曲では、6小節目でEbmaj7に一時終止した後、Ebメジャーキーの平行調であるCマイナーキーのトニックへ進むようなII→V→I進行が行われ、最後のIの部分がCmの代わりにCとなることで、Cメジャーキーへの復調が実現しています。(2回目の15〜17小節では、II→V→IVでサビ頭のサブドミナントに進行しています。)
 4度上・2度下という部分転調の連続は、この最後の短3度下への復調のためのネタ振りでもあったわけです。
 なお、このCに進むII→V→I進行は、IIm7→V7→Iではなく、II7→V7→Iといういわゆるドッペルドミナントから始まる進行になっており、II7=D7の特徴音であるF#音がメロディでも使われているため、メロディだけ見ると、直前までEbメジャーキーのフラット系の音が使われていた中でシャープ系の音が出てくるという結構アクロバティックなものになっていますが、その大胆な展開が自然な流れの中で起きているあたりに、聴く者の感情を揺さぶる秘密がある気がします。

【定番ポイント4】IV→V/IVから始まるサビ
 IVから始まってIに一旦落ち着くまでの大きな流れで、4度進行の連続を用いてIV→IIIm7→VIm7→IIm7→V7→Iと展開していく進行は、途中でトニック系のVIm7に一時解決する地点もあり、局所的な起承転結ができているので、ドラマチックなサビなどでよく使われますが、その中でも、冒頭のIVをIV→V/IVと分解するパターンは王道中の王道です。今回のCキー版で言うと、17小節目頭のFmaj7→G/Fの部分ですが、Fmaj7→G→Em7ではなくベース音を保持してGの代わりにG/Fを使うのがポイントです。これは、単にベースラインをスムーズにする効果があるだけではありません。ベース音を保持することでサブドミナントとしての位置づけは保ちつつ、上の和音はドミナントに進行して、なおかつベース音に対する増4度という非常に緊張感の高い音を内包することで、内なる感情の高ぶりのようなものを表現するにはもってこいの進行なのです。
 なお、IV→V/IVではベースを保持して上声部が変化、V/IV→IIIm7では上声部は保持してベースが変化、となっている点も、スムーズな進行でダイナミックな効果が得られるという意味でこの進行が好まれる理由となっています。

【定番ポイント5】2度目はより強い進行に
 21小節目からのサビの後半も、サビ前半と同じFmaj7→G/Fから始まっていますが、その後の展開は変化します。ベースラインは同じE→Aですが、単に4度進行というだけでドミナント7thは出現しない前半のEm7→Am7に対し、後半ではE7→Amという明確なドミナント進行とすることで、一時的なマイナー感を打ち出しています。さらに、その後の展開も、前半はDm7→G7→Cmaj7という普通のII→V進行ですが、後半ではドッペルドミナントD7を使ったより強い進行を用いています。25小節目以降楽曲全体が解決に向かう直前に置かれている24小節目のドミナントで一旦タメを作る前のD7→G7の進行の部分に、メロディー全体の感情のピークも設定されていますね。

【定番ポイント6】ベースの半音下降
 曲の最後に、また王道中の王道のベースの半音下降が出現しています。25〜26小節目のAm→Ab+5→C/G→F#m7-5は、コード全体としてはAmを維持して、内声がA→Ab→G→F#と変化するクリシェの部分をベースに持ってきたと解釈できますが、ベース音が変わる以上、そこにはただのクリシェよりは明確なコード進行感も現出します。また、A音は途中でベース音と衝突するので、上声部で維持されるのはC音とE音です。F#m7-5からG(実際にはDm7/G)への進行は、ベースの流れで言うとF#m7-5→Fmaj7→Dm7/Gとなりそうですが、ここでは曲の最後の終止感を明確にするため、Fmaj7ではなくDm7を用いてII→V進行にしています。これは、半音下降の流れでFmaj7になる所をベースだけDに落としたという解釈と、Amから始まる一連のコードを大きくAmとしてくくって、Am→Dm7→Dm7/Gという進行だという解釈もできます。そもそも、F#m7-5自体、D7の代理コードという意味合いもあり、そのままでもGに進行できるコードですが、半音下降の進行でじわじわため込んだものを一旦切り捨てて大外からDm7→Dm7/Gという進行に持ち込むというあたりが、歌詞の内容とも連動した演出にも見えます。(亜美さんが弾き語りで歌う時は、まさにそんな感じで歌ってますね。)
 ベース音のスムーズな進行ということで言うと、他にも22〜23小節目でAm→D7の代わりにAm→Am/G→D7/F#、24〜25小節目でG7→E7→Amの代わりにG7→E7/G#→Amを用いているあたりにも見て取れますが、スムーズ過ぎる進行も時にダイナミックさを損なうことにもつながるので、23〜24小節目でD7/F#→Dm7/Gと繋がずに、間で1回ベースをDに落としているのは、潔さを残したいというバランス感覚なのだと思います。

【定番ポイント7】引き算による彩りボイシング
 なにげないボイシングに着目すると、またいくつかポイントが見つかります。
 まず、曲の冒頭でC→G/Cという進行が使われています。歌い出しはあまりうるさくコードを動かさずさりげなく始めたいところなので、この2小節は基本的にはCコードのままで、単純なCから2小節目ではテンションとしてB音D音を追加して少しだけ変化をつけているのですが、ポイントは2小節目でE音を抜いているところです。(G/Cは構成音で見るとCmaj9からE音を抜いたコードです。)ルートに対して3度の音というのは、コードの機能としてはルートに次いで重要な音なので、これをあえて除外して、結果的に上声部にGメジャーの3和音ができることで、同じCをルートとしてCメジャーコードのコードノートとテンション以外使用していないにもかかわらず、Cメジャーコードとは異なる何かがそこに出現しているのです。
 あと、細かい所ですが、20小節目のCmaj7から次の小節のFmaj7に繋ぐ進行も、このコードネームで表されるボイシングが選ばれている理由があります。この部分はトニックのCmaj7に一旦解決した後再びサブドミナントのFmaj7に進む際に、Fmaj7に解決するセカンダリードミナントであるC7を経由したCmaj7→C7→Fmaj7という進行が基本形です。さらにこのC7がGm7/C→C7と分解されてCmaj7→Gm7/C→C7→Fmaj7というのがよくあるパターンですが、ここでは、Gm7/CのF音と、C7のBb音が除外されてCmaj7→Gm/C→C→Fmaj7となっています。
 まず、Gm/Cについて、GmとGm7では大して違わないように見えますが、ベースにC音を置いた場合は、G音から見た7度は実はルートから見ると4度となり、コードの構成音としては非常に重要なものです。Gm7/C→C7という進行は、C7sus4→C7という意味合いがありますが、Gm7/CではなくGm/Cとすることで、その意味合いが消えるのです。実は、採譜したバージョンのピアノでは、ここでボイシングによるラインとしてD音→E音という流れが使われており、その程度の彩りは欲しいけど、C7sus4→C7という進行を持ち出すのはToo muchであるということで、あえてF音は除外されています。
 一方、C7ではなくCを使われている部分について、Fmaj7に進むドミナント7thとしても、また一時的な転調感を出す上でも、Bbの音は本来は非常に重要な音なのですが、これを省略できるのは、直前のGm/CであらかじめBb音が提示されているためです。Gm/Cのところで既に転調感が出ているので、あらためてCの所にBbを入れる必要はなく、また、Bbを含むスケール上でのCなので、C7にしなくてもFmaj7に進むドミナントとしての機能を持つCだと自然に感じ取れるのです。もちろん、必要がなくても入れてもよさそうですが、ドミナント7thの4和音をそのまま全部鳴らすと、そもそも、結構くどい、もしくは野暮ったい印象となるので、3和音で済むなら音の響きとしてはそちらの方がきれいなのです。さらに、内声のラインとしてBb→Cというものを浮かび上がらせる意味でもBb音は除外されているのです。
 つまり、Cmaj7→Gm/C→C→Fmaj7は、コードの機能上必要なものは残しつつ、夾雑物を除外してきれいな流れを作った、洗練されたボイシングなのです。

 ここでは、あくまでもコードに着目したので、コードとメロディーの関係まではあまり言及していませんが、どこを取ってもポップスの教科書のような完成された楽曲だということがよくわかりますね。

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幾何大王からの挑戦状#13

今回も締切当日ですみません。

Angle13_q 「∠CAB=40°,AB=ACの二等辺三角形ABCにおいて,AB上に点D,AC上に点Eがあり,BC=DC,AD=CEのとき,∠EDCを求め,その角度となることを初等幾何で証明してください。」


頂角を隠して答えとなる角度を与えると、最近Yahoo知恵袋などで話題になった一部で有名な難問となります。今回の問題が証明できたなら、その難問の少なくとも1つの解が頂角=40°であることは証明できたことになりますね。
解答締切は本日5/11(水)、送付先は「理系への数学」5月号にてご確認を。

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