« 使えない津波予報ページ | トップページ | 南千住のモノリス »

北斎展

051116_1 外の陽射しがあまりにも気持ち良さそうだったので、仕事を放り出して上野公園に出かけた。美術館や博物館が立ち並ぶエリアに自転車で行けるという地の利を活かさない手はないので、開催されている特別展はなるべく見に行こうと思っているのだが、多忙な時期のあとジム通いを始めたこともあり、しばらくご無沙汰していたのである。公園の並木も、もうすっかり秋深しという風情である。
 今日は、何も下調べもせずに出かけたので、公園内の看板を物色する。東京都美術館では「プーシキン美術館展」をやっていたが、西洋絵画を見たい気分ではなかったので却下。国際子ども図書館という所でやっている国際絵本原画コンクール入賞作品展には非常に魅かれたのだが、残念ながら第3水曜日はちょうど休館日。この「国際子ども図書館」という存在自体にも興味があるので、次回は是非行かねば。
 というわけで、本日のコースは東京国立博物館の「北斎展」に決定。

051116_2 なんなのだろう、この圧倒的なバイタリティは。人気浮世絵師というのは、当時としては大衆娯楽の中心にいるスーパースターだったのだろうが、すごいのは90歳で没するまで約70年もの長き間第一線で活躍し続けたこと。木版画である浮世絵の原画を描く絵師であり、肉筆画を描く画家であり、イラストレーターであり、漫画家であり、プロデューサーでもあった。世俗の真っ只中で磨き続けた芸風はポップなセンスに満ちあふれており、大胆かつ繊細でヴィヴィッドな感性も、また技術的にも、齢を重ねる毎に枯れるどころかパワーアップし続けてている。「画狂老人卍」という画号を用いた最晩年の肉筆画は本当に素晴らしい。
 今回一番気に入ったのは、その最晩年の「柳に烏図」という肉筆画。風になびく柳の枝に、風の中を舞う14羽の烏を流れるように配した大胆な構図。画題からしてモノトーンな色彩だけに、なおさらその構図の素晴らしさが際立っており、絵の前に立ったときはそこから何か異世界が沸き立ってくるような錯覚を覚え、しばらく動けなかった。もちろん、構図だけでなく、ディテイルを描く繊細な筆致も素晴らしい。この作品は今回初公開らしいが、これを見られただけでも行った甲斐があった。
 晩年になっても、自らまだ成長過程であると言い続け、その通り「まだその先が見たい」と思わせるような作品を死ぬまで作り続けた北斎。この希代の大天才とは比べるべくもないが、生きていく限りは、生臭く欲を持って生きていきたい、そういう思いを充電させられた、そんな展覧会であった。

 ちなみに、今回は、出展数も非常に多く、また人気が高く入場者数も多いため、全部見るのには結構時間がかかり、夕べから寝ていなかった身には正直きつかった。これから見に行かれる方は、時間と体力の余裕のある状態で臨むことをお勧めする。なお、展示会場は大きく2つのブロックに分かれており、私は年代順の後半から先に見た。初期の作品は習作期であり、どちらかというと後半の方が面白いのだが、どうしても展示の最初の部分が一番人の流れが滞る傾向にあるので、そこで無駄に疲れてしまう前に、「富嶽三十六景」や最晩年の作品群を含む後半を先に見たのは正解であった。

|

« 使えない津波予報ページ | トップページ | 南千住のモノリス »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/133198/7154277

この記事へのトラックバック一覧です: 北斎展:

« 使えない津波予報ページ | トップページ | 南千住のモノリス »