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紅葉狩りは釣瓶落としで一期一会

 金曜日に、仕事が少し一段落して、天気もよさそうだったので、ふと思い立って紅葉狩りに出かけることにした。前日夜にYahooの紅葉情報を調べたのだが、東京では「紅葉見ごろ」はまだなく、箱根は遠いし、日光は今年一度行っているので、行き先は秩父の「浦山ダム周辺」という所に決定。聞いたこともない地名だが、秩父の音楽寺や長瀞には行ったことがあり、その近辺らしい。

 できるだけ早く出かけたかったのだが、例によってずれた生活時間は回復せず、徹夜もしたくないが、早く寝ないとまずいと思えば思うほど眠れなくなるというある種持病の不眠症も相変わらずで、結局ちょっとだけ睡眠をとってから部屋を出られるようになったのは午後1時すぎ。行き先の最寄り駅は、秩父鉄道の浦山口駅だが、i-modeの乗換案内で調べたら、15:55には到着することになっていたので、日のあるうちに少しは見て回れるかなと思い、決行することにした。
 ところが、出発駅についた時に、パスネットカードとSUICAを忘れてきたことに気付き、なんとなく初っぱなからいやーな予感。財布は持っていたので別に問題はないと思っていたのだが、これが大きな落とし穴であった。上野で地下鉄からJR高崎線に乗り換えた時、切符を買う時間のタッチの差で乗換案内で見た便に乗り遅れ、経路を再検索したら、浦山口駅到着はいきなり40分も遅くなり16:35という表示。日没に間に合うかどうかも微妙な時間に。それでも、もう熊谷までの切符は買ってしまったし(これもSUICA忘れたせいだ)、いまさら引き返す気にもなれず、電車でのんびりと読書するのもいいかと思い直して、そのまま乗車。

 熊谷駅で下車したのは、学生時代のバンド仲間の家にお邪魔した時以来記憶がなく、もしそうなら約20年ぶりである。当時はまだ上越新幹線が開通したばかりだったはずなので、それから随分様変わりはしたのだろうが、残念ながらあまり覚えていない。ただ、まだ新しい新幹線の高架の生々しい感じだけが印象に残っている。
 熊谷からは単線の秩父鉄道に乗り換え。上野でのタッチの差で到着予定時刻が大幅に遅くなったのは、この秩父鉄道の運行間隔がまさに40分空いていたためであった。15:16発の電車に乗ると、ここから景色は一気に田舎モード。当初到着予定だった15:55には既に随分日は傾いており、そこからまさに釣瓶落とし。16:15頃には時折山に日が隠れるようになり、浦山口の直前の秩父あたりで完全に日没。途中の窓からの景色でも紅葉が見られるということもなく、この時点で完全にテンション急降下。

051106_1 浦山口駅は、前後の線路も山中に架けられた橋を走っている、まさに山の中にぽつんとあるような感じの駅。昼間であれば印象も違ったのかもしれないが、紅葉狩りや、夏場に近所のキャンプ場を訪れる以外は、地元の顔見知りの人たちしか利用しないような駅である。こんな平日の夕方にやってきて改札前にある案内図を眺めている自分の姿が、ひどく場違いに思える。駅は周りより高い場所にあるので、地図を見てダムに近づく方向に降りていくと、いきなり民家同士の塀と塀に挟まれた幅1メートルもないような歩道に入り込む。どうやら地元民以外は反対側に降りるのが正解だったらしい。写真は駅から見下ろした集落。行き止まりだったらどうしようとビクビクしながら歩くと、車道に出て一安心。まだ日没後間もない時間だったので、なんとか明るいうちにダムの周辺にたどり着こうと歩き出す。

051106_2051106_3 このあたりは浦山ダムの下流にあたり、道のすぐ横は、ダムが放水すると水位が上がるような渓谷になっている。川岸まで行きたかったが、私有地らしく入り込めず。ダムを下から望むポイントに橋がかかっており、ここが一つの景観ポイントらしいが、思ったより紅葉も少ない。おそらく、ダム湖である秩父さくら湖の周囲に、もっと見ごろの紅葉があるのだろうが、この時点でかなり薄暗くなっており、ヘアピンカーブの道には峠を攻めているようなバイクも見かけたりと、一人で歩くにはかなり心細い状況になっていたので、ダムの上まで行くのは断念し、とりあえずこの場所で、紅葉狩りにきたという体の写真を携帯で何枚か撮影。明るさは勝手に補正されているので、実際の印象はもっと夕やみに近い感じであった。結局このポイントだけ眺めて帰路につくこととなった。

 駅へ戻る道が分からないのではないかと不安だったが、あたりが闇に包まれ始める中、駅の明かりは見過ごすべくも無かった。駅に戻ったのは17:10頃。結局、約35分の短く心細い観光であった。浦山口に最初に到着した時点で帰りの電車の時間を一応確認したつもりだったのだが、どうやら休日ダイヤを見ていたらしく、電車は17:05に出たばかりで、次の電車は17:40。駅に帰り着いた時、駅には、ただ一人の駅員さん(=駅長さん)と地元の人が改札の前で2人で立ち話をしているだけで他には誰もおらず、まだ電車が来るまで30分もあるのに無人のホームに入るのもなんなので、少し離れた所に腰を下ろして所在なく本を開いていると、そのうち地元の人も帰って行った。
 場違いな感じの自分と駅長さんだけが残されて、話しかけるタイミングも微妙に逃し、勝手に気まずくなっていると、東京方面に帰るらしい若い客2人が現れた。正直救われたような気分になって、それをきっかけに改札を通り、駅長さんに話しかけようとしたら、逆に駅長さんの方から「コーヒー飲みませんか」と声をかけてくれた。こちらの所在なげな感じはお見通しだったようである。「一人で飲むのも味気ないから」と、少しくたびれた紙コップにインスタントコーヒーを入れてくれて、「このコップは洗って使うから、捨てないで下さいね」というのも、この場所では極あたりまえの作法に感じられる。私はと言えば、変な時間に現れた観光客という照れから「せっかくだから紅葉を見ようと足を延ばしたのだけど、電車1本乗り遅れたら、日没に間に合わなくて…」等と言わずもがなの言い訳をしつつも、この1杯のコーヒーのおかげで、最初でつまずいた今回の小旅行がちょっといい想い出になったなあと感じていた。電車に乗る時に、感謝の気持ちでもう一度頭を下げたら、駅長さんはこちらに敬礼を返してくれた。一期一会。

 帰りは、御花畑駅(すごい名前である)で座席指定の西武線特急に乗り換え(西武線の駅は西武秩父)、池袋経由で帰宅。都会の明るい夜に慣れた身としては、浦山口駅にいる時点ですっかり夜中の気分になっていたのだが、3時間ぐらいかけて帰宅すると都会の時間軸に戻り、それからまだジムに出かけて一汗流すだけの時間が残されていたというのが、なんとも不思議な感じである。

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