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アニメ「巷説百物語」DVD-BOX

 前からその存在は知っていたのだが、巷のレンタルショップ等では見つからず、先日(といっても、だいぶ前だが)、忙しくてむしゃくしゃしてた時に、Amazonで衝動買いしてしまった。ご存知京極夏彦の連作短編を原作としたアニメ作品。2003年10月から1クール、地方局で放送されたもの。
 原作とは違う所は多々あるのだけど、アニメならではの表現の必然性のもと、独自の世界が構築されているので、逆に原作を踏まえたパラレルワールドということで違和感はない。作画も、こだわって書き込んだ部分と、大胆に省略してデフォルメした部分とのメリハリも効果的で、冒険的な表現も破綻せずにしっかり構成されており、非常にポテンシャルの高い制作現場だったことが窺われる。
 京極夏彦の大きな2つの妖怪シリーズ(「姑獲鳥の夏」に始まる長編推理物と、百物語シリーズ)は、基本的に同じような構造を持っている。語り部であり、読者と同じこちら側の世界の住人である主人公(関口や百介)が、「妖怪」のからんだ怪しい出来事に巻き込まれ、怪の世界に通じている仕事人(京極堂や又市たち)がその「妖怪」を始末する(必ずしも退治しているわけではない)。ただし、この仕事人たちのやっていることは、いずれもタネも仕掛けもあることであり、始末しているのは人の心に住む妖怪である。しかし、京極堂の口癖のように「この世に不思議なことなど何もないのだよ」と仕事人たちが言えば言うほど、読者はそこにまぎれもなく存在する妖怪の姿を見てとることになる。このアニメ版「巷説百物語」は、製作者自身が述べているように、あえて又市たちを「不思議な」存在として描いている。それでは世界観が真逆ではないかと思われるかもしれないが、そうではない。本当に描きたいのは、こちら側の世界と怪の世界の狭間にはまりこんでしまった者たちであり、それを描く上でのアプローチの違いにすぎない。小説とは違い言葉で心理描写が出来ないかわりに、目に見える物については身もふたもなく描いてしまえるアニメにおいては、又市たちにも非現実の要素を残した方が、描きたい世界に近かったということであり、実際それは奏効している。
 まあ、そんな分析はともかく、独自の異世界にいざなってくれる良質のエンターテインメント作品であることは確か。(デフォルメされていても、どぎつい表現を受け付けないという人にはあえて勧めはしないが。) ケイコ・リーの歌うOP/EDも、かなり耳に残る。DVD-BOXは約2万円也で少々お高いが、損はしないと思う。

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