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ゼータ関数の話

 最近、北野武が数学の深夜番組をやっているが、今週の話で、前々から「許せない」と思っていたある式が出てきたので、それについて。
 その式とは、次のようなものである。

ζ(0)=1+1+1+・・・=-1/2

 1を無限回足した結果が-1/2になるという、小学生が見てもおかしいとわかる式。こんなものを見せてこれが今の数学の成果であるみたいなことを言うから、「数学なんて結局象牙の塔でわけのわからない思考ゲームを繰り返しているだけの現実世界には役に立たない学問」というような印象を与えてしまうのである。
 もちろん、こんな式が正しいなんて数学者が言っているわけではない。(少なくとも、イコールの記号の意味を変えない範囲においては。) ただ、数学に携わる者がこんな式を持ち出してくるのには当然なんらかの意図はある。ここで言おうとしているのは、本当は次のような内容であると思われる。(大筋は間違ってないと思う、多分。)

*****
ゼータ関数は、z>1(厳密にはzの実部が1より大きい複素数)の範囲においては
ζ(z)=1^(-z)+2^(-z)+3^(-z)+4^(-z)+・・・
と定義されるものであるが、さらに、この関数が数学的に意味のあるような「ある特徴」を保つように、上記範囲以外のzについても値を持つように定義域を拡大して再定義してやる(「解析接続」のこと)と、
ζ(0)=-1/2
ζ(-1)=-1/12
等の値を取る。
もし、元々の定義のまま考えるならば、
z=0では1+1+1+・・・
z=-1では1+2+3+・・・
と、いずれも∞に発散する無限級数であり、これだけ見ると、-1/2や-1/12といった値とは無関係に思える。しかし、これらの無限級数に量子力学の世界と関連する「ある解釈」を与えてやり、その上で「余分なファクターを除外する」という操作(「繰り込み」と言うらしい)をして、「1+1+1+・・・」や「1+2+3+・・・」の中の意味のあるファクターだけを見るとそれぞれ-1/2、-1/12という値になるということが近年明らかになった。つまり、ゼータ関数は、定義域が拡張された範囲においても、おおもとの定義である無限級数の「ある解釈の結果」としてその値をとらえることができることがわかったのである。
*****

 私自身、細かい中身を理解しているわけでは全くなく、大ざっぱな情報から意味の通る文脈に構築してみただけだが、これだけ見ても、間違っても「1+1+1+・・・」と「-1/2」を単純にイコールで結んでいいはずがないのは明らかである。にもかかわらず、「今の数学ではこういうことになっているらしい」というような文脈では必ずと言っていいほど「1+1+1+・・・=-1/2」「1+2+3+・・・=-1/12」という式が登場する。これが(数学にそれなりの思い入れのある者としては)許せないのだ。
 この繰り込み云々の話は、どちらかというと、数学が「机上の空論」の世界ではなく、例えば量子力学と言った現実世界と密接に繋がっている世界であるということを示す話であるはずなのに、話を面白くするために途中の文脈をすっ飛ばして「1+1+1+・・・=-1/2」などという無茶な式を前面に出してしまっているがために、全く逆の印象を与えてしまっているのがなんとも腹立たしい。「一見」どころか本当にデタラメな式を見せられて「不思議ですね」と言われても、馬鹿にされたような気分になるだけである。

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