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「日本以外全部沈没」

 この日最後は、渋谷シネセゾンのレイトショウでこの作品。あの筒井康隆の迷作短編のまさかの映画化である。言うまでもなく「日本沈没」のパロディであり、内容はタイトルそのまんまである。原作もどぎついブラックユーモアにあふれた作品なのだが、なんせ30年以上前の作品であり、しかも10ページ程度の短編なので、ネタは今の国際情勢を踏まえて全面的にリニューアルの上、映画用に膨らませてある。
 正直言うと、文学におけるこういう過激にブラックな作品を、そのまま映像化したからいいかというと、必ずしもそういうものではないと思う。さらに、ネット社会になって、一般市民が匿名で悪意に満ちた言論を節度なくばらまくこの時代に、「表現のプロ」が提供する文学や映像作品における「ブラックな表現」というものの役割は一旦リセットされてしかるべきだとも考える。なので、今回の映画化には、「あの作品を本当に映画化してしまった」という意味以上のものは特に期待していなかったのだが...筒井ファンにとってはその「本当に映画化してしまった」という部分のインパクトが大きいのである。
 それに、どんなことでもまずは笑い飛ばしてしまうことの力というものをまだ信じていたいという思いも一応ある。でも、すぐ横の席で見ていた(私と同世代か少し上ぐらいの)オヤジが、最近の東アジア情勢にからんだネタばかりにやたら過剰に反応して笑っているのを見たりすると、それは何かがずれてしまっているのでないかという気もする。
 ちなみに、私自身は、最後まで含み笑いやら忍び笑いをしながら楽しく鑑賞。ところどころ苦笑い。
 いずれにせよ、善くも悪くも、一昔前のアングラのにおいのする作品である。なんせ、観に来ている客がみんな怪しい(爆)。よく考えたら、この日観た3作品は、どの2つをとっても客層がほとんど重ならないのではないかという気がする。少なくとも、この3本を同じ日に観た者は、他にだれもいないだろう。
 そういえば、各国の元首が集まる店で、「パーティーで主役を取る!」に出演してたプリマベーラがイリュージョンを披露してたなあ。こんなところでお目にかかれるとは。

 筒井作品の映画化といえば、この夏公開されたアニメ版「時をかける少女」はやたら評判がよかったが、あれは初期のジュブナイルSFで、文学としての筒井作品の中では決して重要な位置づけのものではないので、なんとも微妙な感じである。筒井作品ということとは関係なく後でDVDででも観てみたいけど。同じアニメでも、もうすぐ公開される「パプリカ」は、まさしく近年の筒井ワールド。これは忘れずに観に行かねば。パプリカ役が林原めぐみ。うーむ、なるほど。

061115_2 1日に映画を3本もハシゴしたのなんて、いつ以来だろう。(もしかしたら、初めてか。)レイトショウが終わり、渋谷駅に向かう途中、ふと見上げると、東急のビルの壁に人がぶらさがって、おそらくはクリスマス向けの装飾の準備作業をやっていた。もうそんな季節か...。

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