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免許更新と暗証番号

 1月末に「運転免許更新のお知らせ」が届いたとき、そこに「手続には、暗証番号(4桁の番号を2組)が必要です。あらかじめ決めてからご来場ください」という記述を発見し、愕然とした。今の時代、まともに生活をしている者であれば、無駄に増え続ける暗証番号がどれだけ生活のストレスになっているかわかるはずである。それでも、平気な顔で暗証番号の設定を強制するシステムを作る奴っていうのは、「いくら暗証番号が覚えられないといっても、こんなに大事な事柄に関する物ぐらいは覚えられるだろう」と考えている、すなわち、自分の関わっている事柄が世の中で一番大事なことだと信じて疑わない傲慢な連中である。まさにお役所側の発想なのだが、しかも2組というのがタチが悪い。そもそもこのハガキには、その暗証番号が何の目的で使われるのかも書いてないのである。
 というわけで、昨日江東試験場に更新手続きに行く前から憂鬱だったのだが、案の定、講習も含め手続きに要した約2時間の間、1秒たりとも血管ぶち切れそうな血圧がおさまる瞬間はなかった。

 まず、最初の受付で、手続き用紙とともに「暗証番号申告用紙」なる、ペラペラの紙切れを渡される。それには、2つの暗証番号を書く欄がでかでかと存在し、そこに暗証番号を書けという。紙面にはこんなことが書かれている。

***
      暗証番号申告用紙
○ 暗証番号は、個人情報を保護するために必要となります。
  暗証番号を設定しないと個人情報が第三者に読み取られる
 可能性がありますので、必ず設定してください。
○ この申告用紙に基づき暗証番号申告端末で入力することと
 なります。

 暗証番号1
     □□□□
     4桁の番号を記入してください。
 暗証番号2
     □□□□
     4桁の番号を記入してください。

※ 暗証番号はキャッシュカード、クレジットカード等の暗証
 番号とは異なるものにしてください。
1 暗証番号1
  本籍、顔写真以外の記録を読み取ることができます。
 (氏名、生年月日等)
2 暗証番号2
  <暗証番号1及び暗証番号2を入力することによって>
  暗証番号1によって読み取れる記録に加えて、本籍及び顔
 写真も読み取ることができます。
***

080329_1 そもそも、暗証番号を紙に書かせるということが意味不明である。しかもよく見ると、「この申告用紙に基づき暗証番号申告端末で入力する」って...それじゃこれは「申告用紙」ですらないだろう。この紙を前に2分程凍りついた後、受付に戻り、

「この暗証番号って、自分で入力するんですよね?じゃあ、別にここに書く必要はないですよね?人に知られてはいけない番号をこんなものに書く意味がわからないのですが?」

「あ、別にそれには書かなくても、端末で入力して頂ければ結構です。」

じゃあ最初からそう言え。

「それと、暗証番号を2つも入れることになってるんですが、これは同じでもいいんですか?」

「それはですね、一応情報に2段階のロックがかかってまして、1つ目の暗証番号では本籍と顔写真以外の...」

「それはわかるけど、ただでさえ暗証番号だらけなのに、新しい暗証番号を2つも覚えろと言われても困るんですが。」

「そのへんはご自分の判断で決めていただければ...」

「つまり、同じ番号でも構わないんですね。」

「自由に決めていただいて結構です。」

 まあ、それならそれでいいんだけど、そもそもこれが免許証のICカード化に伴う話だってことも、そのICカードから「個人情報を読み取る」という概念自体、どのような事例を想定しているのかも、何の説明も受けてないんだが...と思いつつ、先に進もうとすると、なんかいかにも「私は何も理解してません」と顔に書いてあるようなおっさんが、「はい、暗証番号はこっちで入力〜」と呼び込みみたいなことをやってる。頭が痛くなってくる。呼び込まれそうになってあわてて順路を確認し、手数料の印紙を買ってからその入力端末が並んでる所に行く。

 暗証番号を設定する場所のはずなのに、プライベートなブースが用意されているわけでもなく、あまりにもオープンに端末が並んでおり、そのうるさいおっさんが後ろからのぞき込んで「はいこのパネルで入力して」とかやってるカオス状態。それに、そもそも暗証番号を入力するという操作は、書類や写真が出そろって最後にカードを作成する局面で必要なはずなのに、なぜ視力検査より前のこの段階にこの手順が? 一体「何に対して」暗証番号を入力するのか? 周りをよく見ると「登録カード作成」の文字が。ということは、ここでその「登録カード」とやらを作って、さらにそれを使って下流で免許証を作成するということなのか? よくわからないが、おっさんには関わり合われたくなかったので、とりあえずなるべく離れた端末に向かう。

 タッチパネルで暗証番号を入力するようになっているので、1文字入れて愕然とする。入れた数字がオープンな端末にでかでかと表示されている。こいつらやっぱり頭がおかしい。周りに人がいない間に急いで2つの暗証番号を入力して、登録カード作成...レシートのようなペラペラの紙が出てきた...

...なんじゃこりゃあ?!

 どうやら、登録カードとは、暗証番号をバーコード化したものらしい。これを免許証作成時に使うのだろう。

 それはいい。

 問題は...そのバーコードの上に、2つの暗証番号そのものがくっきりしたでかい文字で印刷されているではないか。これが暗証番号の扱いなのか? しかも、よく見ると、カードの下の方に「免許証と一緒に保管しないでください」と書いてある。ってことは、これは保管されることを想定したものなのか?

 そ・れ・の・ど・こ・が・暗・証・番・号?

 あまりのことに少々我を忘れ、とにかくそのカードの印字面を隠してから、くだんのおっさんをつかまえて(無駄だとは思いつつ)問いただそうとする。

「あのー、すいません」

「ああん?なんだ?」

本当にこういう感じの反応だったので驚いた。さすがにこれは見過ごせない。

「『なんだ』じゃないでしょう」

「ああ…」

だめだこのおっさん。でも、一応言うだけは言ってみる。

「知られてはいけないはずの暗証番号が、でかでかと印刷されて出てくるってのは、一体どういうことなのですか?」

「...難しいことを言うねぇ...」

と、もごもご言いながら逃げていく。本当に逃げていく。いやはや。

 なぜ、こんな馬鹿なことをしているのかという理由ぐらいは想像はつく。要するに役所側も、計8桁の暗証番号を高齢者を含む全員がちゃんと覚えられるとは思っていないのである。だから、暗証番号を印刷したものを渡すという反則技に出たのである。そして、主に想定しているのが高齢者なので、当然印字は大きくなる。端末の画面に暗証番号がそのまま表示されたのは、入力方法がキーボードではなくタッチパネルだということも大きな理由である。そして、やはり高齢者を想定して、画面表示もやたらでかくなっているのである。

 最初から、そういうものだと説明があれば、つまり、暗証番号といっても、所詮はその程度のセキュリティーレベルしか想定していないのだということをあらかじめ告知していれば、それはそれでよいのである。もともと免許証に記載されていた情報をこれからは隠そうというだけの話なのだし、免許証自体を紛失しなければ何も問題はないのだから、見られても困らないような適当な番号を設定すればよいだけである。しかし、真面目に暗証番号を設定したにもかかわらず、その暗証番号が衆人の目に晒されるという状況は、決して看過できるものではない。「だから、他の暗証番号と違うものにしろと言っただろう」というのが役所側の言い分ならば、それは大間違い。次から次に新しい暗証番号が必要となる状況に対応するには、真面目に毎回違う番号にするとしても、なんらかの生成ルールのようなものを準備しておかないととても覚え切れない。そして、そのうちの1つが知られてしまうということは、他の暗証番号についてのヒントが漏えいすることを意味するのである。暗証番号を設定しろと言っておきながら、予想外の形でそれが衆人の目に晒される状態にされてしまうというのは、ほとんど役所側の犯罪である。

 さて、とりあえず登録カードを作って、視力検査を受ける部屋に入ると、あとは写真をとって、さっきの登録カードを渡してそこから暗証番号がICカードに読み込まれ、免許証作成の手続きは終了である。この登録カードを一旦係員に渡す際に「しまった」と思ったが、後の祭り。よく考えたら、この登録カードは単に番号を入力して作るだけなので、端末でだれが何枚作ろうが何も問題ないのである。それならば、真面目な暗証番号ではなく同じ数字の羅列の番号でも入れて作り直せばよかった、ということに気付いたのである。それなら、この暗証番号が堂々と書かれた登録カードを係員に見られても平気だったのに。

080329_2 せっかくなので、講習を受けに行く前に端末に戻り、1並びで登録カードを作ってみたのが、写真。

 話はこれでは終わらない。1時間講習の中でようやくICカード化の説明があった。そこで「最初に暗証番号を書いてもらった紙は、あれはただのメモ書きなので、破って捨ててもらって構いません。ただ、その後に作った登録カードは、端末でカードから情報を読み出す際に必要となるので、捨てないで下さい」とか言ってる。つまり、役所側の想定している「暗証番号」の概念は、最初から「控え」が存在するものだったのである。それは、やはり事前に周知徹底しないとダメだ。後で調べてわかったのだが、暗証番号を忘れた場合、再設定の手続きとなるのではなく、本人が直接出向けば「教えてもらえる」らしい。ということは、役所内での暗証番号の管理はユルユルということである。普通の暗証番号のつもりで、つい重要な暗証番号と同じ番号を登録してしまった人は、恐ろしいリスクに晒されていることになる。

 そして、一度登録された暗証番号は、次の免許更新まで変更できない!

 滑舌の悪い早口で何を言ってるのかよくわからない講習が終わり、免許証受け取り所に行くと、電光掲示板に更新の者の通し番号で自分の番号は既に受け取り可となっていたのだが、窓口の係員がマイクで新規取得者に対する指示をしており、他に窓口もないので様子を見ていたら、いきなり会場にいた新規取得者が窓口に行列を作りやがった。ちょっと待て。その後ろに並べということか?さんざん待たされた揚げ句ようやく自分の番になり、窓口のおばはんに書類を見せると、横にいたさっきマイクでしゃべってた暇そうにしてるおっさんに回された。え?もしかして更新分はこのおっさんが、新規分はおばはんが担当してんの?じゃあ、最初から列を2つにしてくれれば、10分は早く受け取れたよね?

 最後に、受け取った免許証をリーダーにセットして、暗証番号を入力して登録情報が読み出せることを確認すれば受け取り完了である。

 暗証番号を入れた。

 それを保護する目的でICチップ化したはずの本籍の情報が、衆人環視のもと、でかでかと画面に表示された。

 やっぱりこいつら頭がおかしい。

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A・C・クラーク

 A・C・クラークが亡くなりました。90歳なので、大往生ではあるでしょう。SF界の巨星。クラークやアシモフやハインラインといった本流SFというよりは、その影響を受けて日本で独自に発展した「日本SF」に少年期に強い影響を受けた自分としては、ルーツのさらにルーツという感じの存在。残した小説群の存在も大きいのですが、世界的に与えた影響の大きさといえば、どうしても映画と小説が同時進行で制作された「2001年宇宙の旅」が挙げられます。あの映画が公開されたのが40年も前だということが驚きです。(その時、クラークは既に50歳だったのですね。)
 クラークが夢想したほどには宇宙開発は発展しないまま2001年も過ぎ、異常なほどに肥大したネットワーク社会により逆に閉塞感に見舞われている今の人類の状況を、晩年のクラークはどう見ていたのでしょう。

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頭の切り替え

 執筆予定の本(内容は数学関係、詳細は内緒)に関して、もう一歩踏み込んだ内容にするためのアイディアが固まったので、そのためのデータ作成の作業をやり始めたら途中で止められなくなり、ようやく一区切りがついたと思ったら、「締切前倒し強化月間」にため込んだスケジュールの余裕を全部食いつぶしてしまっていた(汗)。データ自体は出来たのだが、全体としてどういうストーリーの章立てとするかなど、頭の中のキャッシュメモリーにある程度全体像が立ち上がっている状態で整理しておかないと、時間を置いてしまうとまた1から思考過程をトレースし直しになってしまうので、可能な限り目次イメージを詳細化する作業までやって、一旦筆を置いたところ。

 で、あわてて模試の方の仕事に戻ろうとしているのだが、頭が全然戻らない。こちらの仕事に必要な情報やメソッドを頭のキャッシュに立ち上げ直すのにまだしばらく時間がかかりそうである。頭の切り替えが素早く出来て、いろんな仕事をパラレルにこなせる人はうらやましい部分もあるが、自分としては、表層を見て俯瞰するのではなく、頭の切り替えがすぐにはできないぐらい深い所まで降りて、そこでしか得られないクオリティで勝負するというのが本領だと思っているので、これはある意味仕方がない。だからこそ、せっかく頭の中にでき上がっている内容を、完成品として吐き出す前に一旦頭から追い出すことを拒否して、頭の中でストライキが起きているのだけど。

 今期の模試と本の執筆が一段落したら、しばらくは地下深く潜航しすぎるのは控えなければ。このままでは孤独死してしまう(苦笑)。

 模試の次の締切が切迫しているので、今はそうも言ってられないが。次に頭を完全に作曲モードに切り替えられるのはいつなのだろう。他にも切り替えたいモードはいろいろあるのだが、タイミングが難しい。

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